Research
医療政策、健康づくり政策の推進に関する研究
徳島県の病院に勤務する小児科医と産婦人科医を対象に勤務環境に関するアンケート調査を実施しました。96名の解析では、週に20時間以上の勤務時間の医師が約4割、週に40時間以上の勤務時間の医師が約1割でした。勤務時間は、宿日直回数、勤務医療機関数と有意な正の相関を認めました。重回帰分析の結果、勤務医療機関数よりも宿日直回数の方が勤務時間に与える影響が大きいことがわかりました。また、複数主治医制やオンコール体制をとっている場合や、バイタルサイン測定などの簡単な手技、カルテ入力や診断書作成で他職種との役割分担がいつもできている場合は、勤務時間が短くなりました。(Nakagawa M, et al. PLos One 2024)これらは、徳島県周産期医療協議会産科医・小児科医の働き方改革を含めた医師確保のあり方に関する検討部会に報告されました。さらには、これらの調査結果等を基にして、地域の産婦人科医の需要と供給予測に取り組んでいます。
徳島県2市2町の特定健診で尿中アルブミンの測定を実施しました。尿中アルブミンは、血管内皮障害に基づく腎臓の糸球体の異常を把握できるとともに、微量アルブミン尿(30-299mg/Cr)の時期には腎病変は可逆的とされています。また、疫学的研究では、アルブミン尿は糖尿病、肥満、高血圧と関連があることが報告されています。我々の調査では、40歳以上65歳未満の顕性アルブミン尿(300mg/Cr以上)を除く1660人のうち12.3%に微量アルブミン尿を認めました。また、微量アルブミン尿と関連する要因を多重ロジスティック回帰モデルを用いて解析した結果、糖尿病、高血圧、肥満以外にも、肝障害(AST、ALT、GGT上昇)でも有意に調整オッズ比が上昇しました。(Fukuda S, et al. BMC Nephrol. 2023) そのほか、eGFR区分と尿中アルブミン量の組み合わせによる紹介基準(CKD診療ガイドライン)では、特定健診受診者の1割弱が腎専門医への紹介が必要となる可能性があることもわかりました。我々は、腎専門医の育成と、地域での市町村保健センターやかかりつけ医と腎専門医とのネットワークが必要であると考えています。